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先回レビューした『ヤンキー文化論序説』の編著者 五十嵐太郎さんの専門は建築史・建築批評なので こちらが本職 「結婚式教会」とは 信仰とは無関係に作られたウェディングセレモニー専用の建築物 おそらく宗教的にぐちゃぐちゃの日本にしかあり得ない非宗教的な教会 と思ったら アメリカのラスヴェガスにもあるそうで まぁ 映画「バクジー」(1991)を観れば ラスヴェガスが砂漠に作られた人工の享楽装置であることがヨク分かるワケだが ロードサイドに簡単に結婚式が挙げられる施設として「結婚式教会」が宗教的な拘束なく存在する唯一の街だという ちなみにこの映画のアネット・ベニングは溜息がでるほど魅力的だった(笑) そーいえば アタシも名古屋駅前の結婚式場CMを作ったコトがあるな こちらはビルディングの屋上に作られた教会で撮影した クライアントの要望は ヴァージンロードと天井の高さを見せること クレーンにカメラのっけて撮ったよ(笑) それから もの凄ーく驚いた経験 数年前 青春18きっぷで東北をウロウロしてたときに 磐越東線でいわきから郡山に移動しておったのであるが 船引 という山間のなーんにもない駅前に突然巨大な西洋風の城が現れたのだ そのただならぬ佇まい(白い建物に緑の屋根)に吃驚仰天(笑) 交尾専用施設にしてはあからさまに駅前過ぎるし 後で調べたら 「ウェディングプラザ丸美」という結婚式場だった 長閑な山の中 駅前にコンビニもない場所に これが突然現れたら 知らない人は驚く(笑) で この本は その「結婚式教会」を著者が実際に訪れて西洋建築様式の視点からそのデタラメぶりを分析したものである(笑) これがめちゃめちゃに面白い この本は決して専門書では無いので 美術史の入門書に出てくるレベルの建築用語/概念を知っていればOK もう「結婚式教会」は古典様式 ルネサンス様式 何でもアリの大チャンポン大会なのだ(笑) 特にゴシックとバロックの意匠が好まれること しかも 元来は建築構造上の要請であった飛梁や交差リブヴォールトが 力学的な機能としてではなく 単なる装飾として引用されているのだ それが正にキッチュという存在を構成するのであり 建築様式に興味の無いユーザーに対し 単純に ヨーロッパの教会っぽく威風堂々と見えれば良いという 虚仮威し なのだ(笑) ただし この本は研究論文ではないので 詳細な様式的分析はない 簡単な指摘に終始するダケなのだ が 十分に愉しめる 第3章で 実際に愛知県や中国地方 そして関東近郊の「結婚式教会」がレポートされる 続く第4章では 評価の高いとされる建築家たちが実際に作った「結婚式教会」が取り上げられる 例えば 安藤忠雄の教会が取り上げられる 風・水の2つの教会の美しい佇まいを多くの人が写真で見知っているだらう しかし やはり美しい「光の教会」が 実はフェイクの「結婚式教会」ではなく 信者の集う本物の教会であることを知っているだろうか しかも 安藤の用いた建築言語に 商業施設である前2者と宗教施設である後者の間で 差異がほとんど存在しないのだ 第3章で取り上げられた「結婚式教会」が建築様式の専門的な視点からは安っぽい引用の混淆であって どこかしらヤンキー的バロックを感じさせるのに対して 第4章のオシャレな「結婚式教会」は モダンからポストモダンという常識的な建築史的視点で語られるのだ この2つの「結婚式教会」の間にある差異とは おそらくユーザーの価値観を背後に持っている 前者はヤンキーバロック的な価値意識 つまり 派手で立派に見えれば満足というおよそ知的ではないユーザー像 後者は 建築そのものに対し知的な消費態度を示すユーザー像というワケだ 特に 前者の「結婚式教会」 ヨーロッパからホンモノの教会の遺構を輸入して表面に貼り付けて「古めかしく見せる」ことに意を用いながらも ユーザーが常に新規さを求めるという理由で 数年で施設としては陳腐化するという 何とも呆れた商業施設ぶりだ 著者はパチンコ屋の過剰な装飾との類似を示唆している(笑) また 信者の集う宗教施設としての教会は 当たり前だが 虚仮威しのゴシック風やバロック風の引用を必要とはしない 正に真っ当なモダンな建築である しかも 教会という主題は 建築家がデザインの夢想を描きやすいらしい 余談だが アタシはアメリカの建築家フィリップ・ジョンソンの極度に清潔なモダニズムが大好きだ 彼がデザインした「ガーデングローブ・コミュニティー教会/Crystal Cathedral(1980)」は 教会から窓という概念をなくしてしまったガラスの塊である あまりにも巨大だが 実に 美しい 結局 日本に固有の「結婚式教会」は キッチュな商業施設に過ぎないのか 著者は 日本人の結婚という儀式の歴史を調べ それが驚くほど最近開始されたものであることに気付く 大正天皇の神前結婚式がその始まりだというのだ 小笠原流と言われる神前結婚式もおそらくはその頃に捏造されたものに過ぎない そして 宗教にコミットしない日本人は 一神教を全く理解しないまま フェイクの教会で 偽牧師の教導で 信じてもいない神に 永遠の愛とやらを 誓うのである(笑) 正に 多くのカップルが カタログ雑誌から始まるウェディング・インダストリー(年間5兆円を超える)のパッケージ商品を消費するという事態(笑) 思い出してみれば バブル期の結婚式場に玉姫殿というのがあって(今も名前を換えて存在しているだろう) 残念ながらアタシは実見したコトはないが 新郎新婦が空中をゴンドラで渡り ドライアイスとレーザー光線を使ったどっ派手な演出が有名だった まぁ たいていの場合は 失笑を買っていたけれど(笑) しかし 50年後 これら多くの「結婚式教会」は解体され跡形も無くなっているだろう と著者は言う ここで消費された夢は どこに逢着するのだろうか しかし ユニークな内容で 面白かった
by duchampped
| 2013-07-11 15:35
| 逍遙的読書
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