方丈記は 何度読んでも面白い
もちろん歌人として あるいは音楽家としての才能に恵まれたらしい長明先生の文章が へたれな理由はない むしろ その近代的とすら言える好奇心 少し自信過剰気味な自存 ドキュメンタリーとも言ふべき厄災の記録 などなど 闊達で美しい日本語を読み返すのは 日本人に生まれた喜びのひとつだと しみじみ 思う
NHKの大河ドラマで 清盛を時々観るが ドラマが描くあの混乱の時代のどこかで 不遇を託っていた若き日の長明先生がいたんだなぁ と 感慨を深くするのもまた楽しみである
堀田善衛さんの『方丈記私記』(1971)は 氏の『定家明月記私抄 正・続』(1988)とならぶアタシの大好きな愛読書だ
この『方丈記私記』に描かれた長明氏の活き活きと愉快な様は その後 方丈記を読み返す度に 鮮やかに脳裏を駆けめぐる(笑)
残念ながら明月記を読む機会には恵まれていないが あの定家先生の高踏的な漢文を読む能力などアタシにはないので むしろその方が残念である(笑)
さて この方丈記 校訂と訳 そして解説をされた浅見和彦さんは吉祥寺の成蹊大学の先生とのことだが 古色蒼然といふではなく しっとりと落ち着いた読んでいて心地よい解説だった 過不足もなく 常に身辺に置きたい一冊である