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![]() この本の扱う聖書は主にヘブライ語聖書、キリスト教から言えば旧約聖書となる。(以下旧約聖書と記す)理由は簡単で、考古学的な調査に基づく史実の解明を旨とする場合、ある歴史を記述したテキストの史実を考究するものだからである。 新約聖書は福音書を中心にイエスという個人の振る舞いを記述しているものであり、歴史記述にある意味で該当する使徒行伝(ルカ福音書の著者による)も、パウロの書簡集と同様にイエスがヤハウェとユダヤ民族との契約を新しい契約によって刷新したという神学を樹立するためのものであって、そこには旧約聖書に記述された様な民族の歴史は含まれていないからだ。 そこでまず旧約聖書がいつ書かれたのか?」が問われる。考古学的な資料でヘブライ語が文字として確認されるのは紀元前8世紀頃だ。つまり旧約聖書で言えばダビデ・ソロモンの統一イスラエル王国が南北に分裂した時代である。 1943年、ドイツの聖書学者ノートが「申命記」から「ヨシュア記」「士師記」「サムエル記」「列王記」に使用される語彙、思想の共通性から「申命記史家」と呼ばれる人物がこの5つの書物を編纂したと主張した。そしてこの「申命記史家」の思想を「申命記史観」と呼び、分裂した北イスラエル王国の滅亡後200年南のユダ王国も滅び、ユダ王国の人民がバビロンに移住させられた「バビロン捕囚」の時期に書かれたと主張した。 「創世記」から「出エジプト記」「レビ記」「民数記」はこの「申命記史家」の記述以降に様々な口伝や周辺の伝承を集めて成立したというのが一般的な旧約聖書成立史なのである。 著者は具体的な遺跡や発掘された碑文などから旧約聖書に記述された出来事を跡付けてゆく。 考古学的にはアブラハムに始まる族長時代の証拠は全く発見されていない。そもそも紀元前2000年期と言われるアブラハム・イサク・ヤコブ(イスラエル)の時代に、聖書ではラクダが何度も登場するのだがその地域にラクダはいないのである。 「出エジプト記」についてもエジプト側にその記録が存在していない。 余談だが、フロイトの『モーセと一神教』(ちくま学芸文庫)は妄想に近い飛躍が多く含まれているが、この時期のコトを知るには役立つ。 モーセの死後、ヨシュアがリーダーとなり神から約束されたカナンの地を奪取する。この「歴史」を記述した「ヨシュア記」「士師記」には矛盾する出来事が含まれている。この後期青銅器時代にエーゲ海辺りに発すると言われる謎の民族「海の民」が西アジアに侵入し、シュメールやアッシリア、バビロニアなどの先住文明を荒廃させたことは考古学的に記述される事象だ。彼らはペリシテ人としてこの南ユダ王国・サマリア(元北イスラエル王国)にも侵入する。士師記に登場するサムソンとデリラの物語は有名だ。このサムソンが戦った相手がペリシテ人だ。 また余談。現イスラエル一帯がパレスチナと呼ばれるのはローマ5賢帝の一人ハドリアヌス帝(在位117-138)がユダヤ人の反乱に手を焼いた結果、旧約聖書でユダヤ人の仇敵とされるペリシテ人の名をこの地域に付けたことに始まる。(ペリシテ人のギリシア語読みがパレスチナ) ミケランジェロの彫像で有名なダビデはユダヤ統一王国の王となるが、ペリシテ人戦士巨人ゴリアテとの一騎打ちが「サムエル記」に記述されている。これは紀元前11世紀の出来事とされるのだが、考古学的にここで記述される武具武装や一騎打ちははるか後代紀元前7世紀にならないと存在しないものだ。ここからも最初に書かれた申命記から旧約聖書が紀元前7世紀以降に記述されたと考えられる理由である。 以下、「列王記」の記述内容が考古学的な資料で検討される。北イスラエル王国のアッシリア帝国への併合、南ユダ王国の滅亡とバビロン捕囚までである。 ここでいきなり旧約聖書の「歴代誌」が割愛され、預言書にいってしまうのが奇妙なのだが、ユダヤ人はエルサレムに還り破壊されたソロモンの神殿に代わる第二の神殿を建てる。この時代にユダヤ人がユダヤ人と呼ばれる様になった。このバビロン捕囚と解放後のペルシャ時代に旧約聖書の多くが整えられたというのが現代の通説になっている。実質的な考古学的考察はここで終わっている。 さて、これらの記述は、たまたまアタシが2012年以降東工大での橋爪大三郎先生の旧約聖書を読む会に出席していたり、昨年春からユダヤ教・キリスト教についてベンキョーを始めたから理解できるのだと思う。 例えば、 ・山形孝夫『聖書の起源』(ちくま学芸文庫) ・上村静『宗教の倒錯』(岩波書店)『旧約聖書と新約聖書』(新教出版社) ・加藤隆『旧約聖書の誕生』(ちくま学芸文庫) ・木村凌二『多神教と一神教 古代地中海世界の宗教ドラマ』(岩波新書) や、元々アタシが西洋美術史専攻だったのでふつーに読んでいた秦剛平氏の ・『異教徒ローマ人に語る聖書ー創世記を読む』 ・『書き替えられた聖書 新しいモーセ像を求めて』 ・『 聖書と殺戮の歴史 ヨシュアと士師の時代』(3冊とも京都大学学術出版会) ・『旧約聖書を美術で読む』(青土社) などを読んでいたからすんなり理解できた面があると思う。 言い換えると、一定のユダヤ教、聖書成立史の知識がないと、この本は簡単には理解し難いと思う。 それで内容は面白いのか?と訊かれれば、そーでもない、と答えるかな。著者は聖書学的研究に頼っている部分が多いのだ。要は考古学的な証拠が少なすぎる。紛争地帯や現居住地域は発掘できないから、今後死海写本やナグハマディの様な文書が発見されないと話は進まない様な気もする。旧約聖書を読むのに飽きたら良い箸休めになるかな。
by duchampped
| 2014-01-30 12:53
| 逍遙的読書
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