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先日『女のいない男たち』を読んで、文体が初期の風合いになっていてけっこう愉しめたので、長編も読んでみた。というかこの本は図書館で相変わらず予約の長い行列が続いている。だからアマゾンで格安に入手した。 何と云えば良いのか分からない。春樹さんの比喩はかつての輝きを少しづつ取り戻しつつあるかの様だし、主人公は内的独白の語彙がやや異なるだけで『風の歌』以来の孤独で静かな時間を丹念に語る。 多崎つくるは牧歌的であると同時に不自然な、4人の友人たちとの「乱れなく調和する共同体」に帰属し幸福だった。しかし4人から一切の「理由」を知らされず「切断」される。帰属する共同体を失い、彼は実はここで一度死んでいるのだ。深く損なわれた彼は故郷を持たないゾンビとして再び生きて行く。すっかり風貌が変化し、駅という「通り過ぎるだけの場所」を作りながら。 やはりこの物語でも求められているのは、愛では無く「理由」だ。 謎めいた筋書きだがそれは「理由」という具体的だが無意味な感情の縺れを延々と追い続ける挙措に付随せざるを得ないものなのだ。絞殺された白雪姫自身に秘密はなかったのかもしれない。多崎つくるが激しく欲情するのは夢の中だけなのだ。 存在理由(レゾンデートル)なんて言葉を思い出すのは久しぶりだったけれど、それ以外にこのシンプルな小説を顕す言葉が見つからない。 フランツ・リストの巡礼の年の第一年スイスの8曲目が何度もでてくる。リストが当時の流行作家セナンクールの小説を援用した曲だ。「自分の唯一の死に場所」である故郷への想いがテーマ。 しかし、多崎つくるには故郷がない。20歳の時の「死」を経て彼は故郷を持つ普通の人間としての存在を喪失した。これは失われ損なわれた故郷への望郷という奇妙な仕掛けなのだろうか。 リストもまた終生故郷ハンガリーの言葉を使わず(使えず)、ドイツ語とフランス語で暮らした。リストの望郷の対象がハンガリーであったことは確かだが。 沙羅という恋人に多崎つくるはゾンビから人間に戻るように要請される。これは他の春樹作品にも多く見られる「自己回復」の主題だ。ほとんどの主人公たちはその為の「理由」を求めて彷徨う。象徴的なキュウリをポリポリ囓ったりしながら。 巡礼の年? それはリストの生涯続けられた作曲活動の痕跡だ。 多崎つくるは自己回復出来るのか。物語は比較的ポジティブな方向を指し示して閉じられる。そこは『ノルゥエイの森』で主人公が最後に電話をかける前の場所だ。
by duchampped
| 2015-05-25 15:46
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